はじめに|小さな島に広がる“群れの楽園”・沖ノ島
千葉県館山市の南端に位置する「沖ノ島」は、陸から眺めるだけでも特別な雰囲気をまとった小さな島です。干潮時には砂浜で本土とつながる“陸続きの無人島”として知られ、夏場は海水浴やシュノーケリングを楽しむ人々で賑わいますが、そのすぐ沖には、ダイバーだからこそ体験できる「群れの楽園」が広がっています。
沖ノ島周辺にはいくつものボートダイビングポイントがありますが、その中でもとくに人気が高いのが
・沖ノ島沈船(水雷艇)
・沖ノ島黒根(くろね)
という二つのポイントです。
どちらも魚影が非常に濃く、季節や潮が合った日には、
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イサキの大きな群れ
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スズメダイの群れ
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アカオビハナダイの群れ
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ムレハタタテダイの群れ
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コロダイの群れ
といった迫力ある「群れのシーン」が次々と現れます。さらに、砂地ではヒラメやツバクロエイ、岩場やソフトコーラルにはオルトマンワラエビなどのマクロ生物も潜んでおり、ワイド派・群れ派・マクロ派のすべてが楽しめる贅沢なエリアです。
本記事では、沖ノ島沈船と黒根でのファンダイビングを中心に、実際に観察できた生物や水中の様子、その日一日の流れ、安全面のポイントなどを、できるだけ具体的にご紹介していきます。これから千葉県館山市・沖ノ島でファンダイブを計画されている方、沈船ダイビングや黒根に興味があるダイバーの方の参考になれば幸いです。
第1章 沖ノ島エリアの特徴とアクセス
1-1 千葉県館山市・沖ノ島とは
沖ノ島は千葉県館山市の南端、鏡ケ浦と呼ばれる穏やかな湾内に位置する小さな島です。島全体が自然豊かな環境に囲まれており、陸上は原生林が残る散策路、海中は岩礁帯や砂地、海藻の森などが広がる多様性に富んだフィールドです。
東京や神奈川方面からもアクセスしやすく、
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車:東京湾アクアライン経由で約2〜2.5時間
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高速バス+路線バス:東京駅発の高速バス利用で館山駅まで、その後バスで沖ノ島方面へ
と、「日帰りファンダイビング」も十分可能な距離にあるのが大きな魅力です。
1-2 沖ノ島ダイビングの魅力
沖ノ島のダイビングの魅力を一言でいえば、
「小さな島のまわりに、信じられないほど豊かな海が凝縮されていること」です。
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黒潮の影響を受けた比較的暖かい海
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栄養豊富な水が混ざることによる豊かな生態系
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島の周囲に点在する根や岩礁、砂地、海藻帯
こうした要素が組み合わさり、イサキやスズメダイ、アカオビハナダイ、ムレハタタテダイなど、「群れを楽しむダイビング」に最適な環境が広がっています。
第2章 当日の海況とダイビングスケジュール
この記事では、実際に沖ノ島沈船(水雷艇)と沖ノ島黒根でファンダイビングを行った一日を想定し、その流れに沿ってご紹介していきます。
2-1 当日のコンディション(例)
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開催エリア:千葉県館山市・沖ノ島周辺ボートポイント
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1本目:沖ノ島沈船(水雷艇)
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2本目:沖ノ島黒根
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水温:おおむね20〜23℃前後(季節により変動)
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透明度:10〜15m前後(コンディション良好な日)
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風向き:北〜北東弱風
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うねり:小
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流れ:沈船・黒根ともに適度な流れ
海況はあくまで一例ですが、魚影が濃く、群れのダイナミックな動きを楽しめる典型的な「沖ノ島らしい日」のイメージです。
2-2 集合から出港までの流れ
沖ノ島ダイビングサービスマリンスノーでは、まずショップに集合し、ブリーフィングと準備を行います。
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受付・健康チェックシート記入
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当日の海況・ポイント説明
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安全ルール・エントリー/エキジット手順の確認
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使用するタンク・器材の確認
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ボートへ移動し、出港
沈船や黒根は、いずれもファンダイビング向けのボートポイントです。特に沈船(水雷艇)は水深25m前後のディープダイビングとなるため、アドバンスドダイバー以上、または同等のスキルが必要になります。
第3章 1本目:沖ノ島沈船(水雷艇)で“群れの壁”に包まれる
3-1 エントリー直後から始まる魚影の濃さ
ボートからバックロールまたはジャイアントストライドでエントリーすると、そこはすでに魚たちの世界の入口です。水面から水深15〜20mラインまでゆっくり潜降していく途中でも、スズメダイやイサキ、小型のベラ類などが行き交い、「この先に何が待っているのだろう」と期待が高まります。
やがて水深25m付近に沈む船体が見えてくると、その周囲を取り巻くようにしてイサキの群れが広がっているのが目に入ります。
3-2 イサキの群れ|沈船を包み込む黄金のベール
沖ノ島沈船の主役といってもいい存在が、イサキの群れです。
この日は特に群れの規模が大きく、視界の端から端までイサキで埋め尽くされるような状態でした。船体の周囲を何重にも取り巻き、ダイバーが近づくとゆっくりと形を変えながら流れていきます。
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光を反射する銀色の体
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群れが一斉に方向転換する瞬間
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船体のシルエットとのコントラスト
どれを切り取ってもフォトジェニックで、ワイドレンズを使えば「一枚の写真の中に動きと迫力が凝縮された」ようなカットが撮影できます。
3-3 スズメダイの群れ|青い吹雪のように舞う
沈船の上部や周囲には、スズメダイの群れがびっしりとついています。イサキの群れが「壁」だとすると、スズメダイは「青い吹雪」。ダイバーの動きに合わせてふわっと広がり、またまとまって群れを作る様子は見ていて飽きません。
スズメダイは身近な魚ではありますが、
沈船という特別なシチュエーション、
適度な流れ、
そして光の入り方が重なることで、
普段以上にドラマチックな存在へと変わります。
3-4 アカオビハナダイの群れ|深場で輝く宝石
水深25m前後という条件が揃うと、アカオビハナダイの群れも見逃せません。
オスは赤とオレンジの鮮やかな体色を持ち、メスを引き連れるように群れで泳ぎます。光が差し込んだタイミングでは、まるで宝石箱をひっくり返したかのようなきらめきが水中に広がります。
アカオビハナダイは動きが速く、写真撮影には少しコツが要りますが、「群れ全体をやや引き気味で撮る」「沈船の構造物と一緒にフレームに収める」ことで、動きと色彩を同時に表現できます。
3-5 コロダイの群れ|沈船を巡回する番人
沈船の周りをゆっくりと巡回していたのが、コロダイの群れです。
厚みのある体と独特の模様を持つコロダイは、一匹でも存在感十分ですが、数匹単位でゆっくりと移動している姿はまさに「沈船の番人」のようです。
イサキやスズメダイのスピードのある動きとは対照的に、落ち着いた動きで優雅に回遊するコロダイの姿は、動画・静止画ともに良いアクセントになります。
3-6 オルトマンワラエビ|マクロ派が喜ぶ小さな主役
沈船というとどうしてもワイド撮影に目が行きがちですが、その陰ではオルトマンワラエビをはじめとするマクロ生物も豊富です。船体の隙間や、付着したソフトコーラルの中などをよく観察すると、長い脚を器用に動かしているオルトマンワラエビの姿を見つけることができます。
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群れや沈船のスケールを楽しむ
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その合間にマクロでじっくり撮影する
こうしたメリハリをつけたダイビングができるのも、沖ノ島沈船ポイントの大きな魅力です。
第4章 2本目:沖ノ島黒根で“群れのショータイム”を満喫
4-1 黒根ポイントの概要
2本目は、沖ノ島のボートポイントの中でも特に魚影の濃さで知られる黒根へ向かいます。黒根周辺は根が複雑に入り組み、潮が当たりやすい地形のため、回遊性のある魚やプランクトンフィーダーが集まりやすいエリアです。
水深はおおむね12m前後のレンジが中心で、沈船に比べればやや浅め。とはいえ流れが出ることもあるため、基本的にはファンダイビング経験者向けのポイントといえます。
4-2 アカオビハナダイの群れ|ふわりと漂う赤い雲
黒根でも、アカオビハナダイの群れが印象的でした。
沈船ではやや深場・構造物の影に集まるイメージですが、黒根では中層からやや底付近まで広範囲に散り、ふわりふわりと漂うように泳いでいます。
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根の肩のあたりに広がる群れ
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光が差し込む時間帯に見られる赤いグラデーション
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他の群れとの重なり
こうした要素がそろうと、黒根ならではの「多層的な群れの景色」が完成します。
4-3 ムレハタタテダイの群れ|白と黒が描く優雅なライン
黒根の象徴的なシーンのひとつが、ムレハタタテダイの群れです。
白と黒のコントラストがはっきりした体色と、背びれの長いラインがとても美しく、まとまって泳ぐ姿は「水中バレエ」と呼びたくなるほど優雅です。
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根の斜面に沿って縦一列に並ぶ群れ
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ダイバーの前方を横切る隊列
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アカオビハナダイや他の群れとの重なり
といった場面は、どこを切り取っても絵になります。ワイドレンズはもちろん、少し引き気味の構図で動画撮影するのもおすすめです。
4-4 コロダイの群れ|浅めのレンジで迫力ある姿を観察
黒根でもコロダイの群れが見られました。沈船よりも若干浅めのレンジで遭遇することが多く、比較的近い距離でじっくり観察できるのが特徴です。
コロダイは単体で見ても迫力がありますが、黒根では数匹〜十数匹単位でゆっくり移動していることもあり、その風格ある姿はまさに「黒根の主」といった雰囲気です。アカオビハナダイやムレハタタテダイの背景にコロダイが入ると、写真全体に重厚感が生まれます。
4-5 ヒラメ|砂地に潜むハンター
黒根の根の周囲には砂地が広がっており、そこで目に留まったのがヒラメです。砂とほぼ同じ色合いに体を変化させ、じっと身を潜めて獲物を待っている姿は、まさに砂地のハンターそのものです。
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じっと動かないヒラメを観察
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ダイバーが近づくと、突然砂を蹴って泳ぎ出す
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その瞬間に舞い上がる砂煙と、ヒラメのシルエット
こうした一瞬の動きは、動画でも静止画でも印象的なシーンになります。
4-6 ツバクロエイ|優雅に滑る“黒根のスター”
この日の黒根を象徴する存在だったのが、ツバクロエイです。
大きな翼のような胸びれをゆっくりと動かし、まるで空を飛ぶように中層を滑空する姿には、思わず見とれてしまいます。
ダイバーの存在をあまり気にする様子もなく、一定の距離を保ちながらコース上をゆったりと移動していくツバクロエイ。根のシルエットや群れを背景にその姿を収めることができれば、この日のダイビングを象徴する一枚になることでしょう。
第5章 沖ノ島沈船と黒根が“群れ派ダイバーの聖地”と言われる理由
ここまでご紹介してきたように、沖ノ島沈船と黒根は、
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イサキの群れ
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スズメダイの群れ
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アカオビハナダイの群れ
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コロダイの群れ
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ムレハタタテダイの群れ
といった「群れ」をテーマに潜るには最高のポイントです。
5-1 群れの種類とレイヤーの多さ
単に魚の数が多いだけでなく、
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種類が多い
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泳ぐ水深やエリアが異なる
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それぞれの群れが重なり合う瞬間がある
という「レイヤーの多さ」が、沖ノ島の大きな魅力です。
イサキ・スズメダイの大きな群れに囲まれ、その背景にアカオビハナダイの群れが見え、その下にコロダイが巡回し、時折ムレハタタテダイが横切る――そんなシーンはまさに圧巻の一言です。
5-2 ワイドもマクロも一度に楽しめる
沈船と黒根は、どちらもワイド派にとってたまらないポイントですが、オルトマンワラエビをはじめとするマクロ生物も豊富です。
1ダイブの中で、
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前半は群れ・ワイド中心
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後半は岩場でマクロじっくり
といった組み立てもでき、欲張りなダイバーにこそおすすめしたいエリアです。
第6章 安全管理と参加条件について
6-1 沈船(水雷艇)はアドバンス以上向け
沖ノ島沈船(水雷艇)は、水深25m前後のディープダイビングとなるため、アドバンスドオープンウォーターダイバー以上、または同等のスキルを持つダイバーが対象です。
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中性浮力のしっかりしたコントロール
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深場での残圧管理
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流れがある状況での落ち着いた行動
といった基本スキルが求められます。
沖ノ島ダイビングサービスマリンスノーでは、参加者の経験本数やスキルを確認したうえで、無理のないダイビングプランを提案しています。
6-2 黒根は中級者以上向けの日も
黒根は水深自体は沈船ほど深くありませんが、潮の向きや強さによっては中級者以上向けのコンディションになることもあります。流れの具合によって潜水時間やコース取りが変わるため、ガイドの指示に従って安全に楽しむことが大切です。
6-3 沖ノ島ダイビングサービスマリンスノーの安全への取り組み
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当日の風向き・うねり・潮流のチェック
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経験豊富なインストラクターによるポイント選定
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ブリーフィングでの丁寧な説明
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少人数制でのガイド
これらを徹底することで、安全かつ快適に沖ノ島の海を楽しんでいただけるよう努めています。
第7章 沖ノ島ダイビングサービスマリンスノーのご案内
7-1 ショップの場所と雰囲気
「沖ノ島ダイビングサービスマリンスノー」は、沖ノ島海水浴場エリアに位置し、沖ノ島の海を知り尽くした現地型ダイビングサービスです。海を目の前にしたロケーションのため、ダイビング前後もゆったりとした時間を過ごしていただけます。
7-2 主なサービス内容
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ファンダイビング(ボートダイビング)
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体験ダイビング
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シュノーケリングツアー
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スキンダイビング体験
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各種ダイビング講習(NAUIオープンウォーター、アドバンスなど)
ビギナーからベテランダイバーまで、それぞれのレベルに合わせたメニューをご用意しています。
7-3 こんな方におすすめ
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千葉県館山市・沖ノ島で沈船ダイビングをしてみたい方
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イサキやアカオビハナダイの群れに囲まれてみたい方
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ムレハタタテダイやツバクロエイなど、黒根ならではの生物に出会いたい方
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日帰りで関東近郊の海を楽しみたいダイバー
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群れ・ワイドだけでなく、マクロ撮影も一緒に楽しみたいフォト派ダイバー
まとめ|沖ノ島沈船と黒根で“群れの海”を体感しよう
千葉県館山市・沖ノ島の海には、小さな島のイメージからは想像できないほどダイナミックで、生命感あふれる水中世界が広がっています。
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沈船(水雷艇)では、イサキやスズメダイ、アカオビハナダイ、コロダイの群れ、そしてオルトマンワラエビ
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黒根では、アカオビハナダイの群れ、ムレハタタテダイの群れ、コロダイの群れ、砂地に潜むヒラメ、優雅に滑空するツバクロエイ
一日のダイビングの中で、これだけ多彩な生物とシーンに出会えるエリアは、そう多くありません。
「次はどんな群れが現れるのだろう」「どんな瞬間が撮れるだろう」とワクワクしながら潜れるのが、沖ノ島沈船と黒根の最大の魅力です。
群れを追いかけるのが好きなダイバーの方、ワイドもマクロもどちらも楽しみたい欲張りな方、そして新しいホームグラウンドを探している関東圏のダイバーの方へ。
ぜひ一度、沖ノ島ダイビングサービスマリンスノーと一緒に、沈船と黒根の“群れの海”を体感してみてください。
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* 2025/11/30 おかぴー店長の気まぐれ日記 *
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